マキアだぞぃ

好き勝手に書きます

全人類「アニメ BanG Dream! It's MyGO!!!!!」を見たか?見たよね??

はじめに

2年ぶりです。CTRL OBのマキアです。

今回のAdvent Calendarはこの記事を書きたくて勝手に開催しました。これから記事を書くみんなもこの記事くらい気軽に書いてください。

という訳でCTRL Advent Calendar 2023 1日目の記事です。どうぞ。

注意事項

この記事はアニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」のネタバレが大量に含まれています。この記事を見る前にアニメを視聴する事を強く推奨します。 それでも閲覧する場合はその点をご了承ください。



















BanG Dream! It's MyGO!!!!!』について

はい、何故まだアニメを視聴していない人がこの文章を見てるんですか!? こんなしょうもない記事を見る暇があるなら、あなたの4時間半を私にくださいませんか?(祥子ボイス)

Amazon.co.jp: BanG Dream! It's MyGO!!!!!を観る | Prime Video

↑迷子の1話リンクです。大切な初見を、このような記事に使うのではなくご自身の目で確かめてください。マジで。

それでも「いやぁ...どんなアニメかも知らないし...バンドリってシリーズものでしょ?」という方も少なくないと思います。 大丈夫。このアニメから見始めれば全く問題ないです。MyGO!!!!!は既存バンドとは独立した存在なので、バンドリを全く知らない人でも楽しむ事ができます。 もちろん今までのバンドリを知っている人にも見てほしい。というか全人類見よ?

MyGO!!!!!は歌ってみたも多数YouTubeに投稿しています。アニメを見るのをまだ渋ってる人も一回聞いてみてほしい。とっても良いから。

この先はアニメのネタバレを本当に多く含んでいるので、お願いだからここで止まってアニメを見てほしい。最後のお願いです。



















アニメ「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」

ではここからは全員迷子のアニメを見てる人が閲覧していると信じて感想を書きたいと思います。

MyGO!!!!!との出会い

私がMyGO!!!!!(今後は迷子と書かせていただきます。)と出会ったのは、今年のアニサマだった。迷子の事は完全にノーマーク、存在自体は知ってたけどその時の私は完全に虹ヶ咲にお熱。だからアニメも「まぁ評判が良かったら見るか...」くらいの温度感。

虹ヶ咲を楽しみにアニサマ3日目の当日に連番者(友人)とライブ前に酒を入れまくっていたのだが、その友人は迷子アニメを前日に最新話まで一気見していた。

酔いが回り出した頃、友人が「マキア君さ...迷子アニメ見た方が良い。」と真剣な目で訴えかけてきた。「10話が本当に良い。俺はブッ刺さっちゃった」と酔いながら言ってきたので、俺もベロベロに酔いながら「分かった、今日のライブが良かったら見るよ」と適当に返事をした。

そして始まったアニサマ3日目、いよいよ俺が楽しみにしていた虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のライブが終わった後。センターステージで突然迷子の演奏が始まった。

その時に演奏した曲の一つに『潜在表明』があったのだが、ボーカルの子の叫びとも言えるポエトリー・リーディングを初めて聴きながら「何なんだこのバンド...」となっていた事だけ覚えている。そう、俺の知っている「バンドリ」ではなかった。

このライブが終わった後、(しばらくオーイシさんの余韻で数日間べしょべしょに泣き崩れていたのですが)アニメを見る事にした。約束は守らないとだからね。

登場人物

  • 千早 愛音(ちはや あのん)

物語前半の主人公的な存在で、基本的に愛音を中心に物語が進んでいく。所謂「ミーハー」な性格で、流行りのモノに手を出しがち。

愛音ちゃんはバンドリの世界についての知識が全く無く(既存バンドの名前すら知らないレベル)、全ての言動や思想が「浅い」。久しぶりに見てて共感性羞恥に陥りそうになってしまって辛かった事をここで表明しておく。私もCTRLに、「プログラミング全く分からない」状態で入ったのもあり過去の自分と凄く重なってしまった。「見栄」「知ったかぶり」「浅い知識でマウントを取る」など、誰もが一度は生きててやってしまうような事を愛音ちゃんはアニメの中で何度もやるのだ。

そんな愛音ちゃんを見てだんだんと「自分もちょっと愛音ちゃんみたいな経験あるな」と視聴者が共感していく。だから愛音ちゃんが悲しんでいると我々視聴者も辛くなってしまう。そんなキャラクターだ。

  • 高松 燈(たかまつ ともり)

この物語の主人公。物事の感性が周りと少しズレている、所謂「不思議ちゃん」。この物語の凄いところは燈ちゃん自身が「みんなとズレている」という事を認識してしまっているというところ。そしてそのズレに対して後ろめたさがあるという事。そんな燈ちゃんは視聴者目線だと「よく分からない子」ではなく、むしろ「心理描写が分かりやすい子」になっている。だからこそ燈ちゃんの言動や表情一つ一つが我々視聴者にもよく伝わってくる。非常に魅力的なキャラクターになっている。

  • 長崎 そよ(ながさき そよ)

公式サイトの説明文を一旦そのまま引用する。

月ノ森女子学園の高校1年生。吹奏楽部でコントラバスを担当している。いつも穏やかな雰囲気のお姉さん的存在。誰にでも優しく、周りから頼られることが多い。考え事をしながら指先をいじる癖がある。

このキャラクターが物語中盤以降とんでもなく凶変する事になるとは、視聴段階では思ってもみなかった。実際MyGO!!!!!プロジェクトが始動してからアニメが放送されるまでキャラクターを演じたままラジオを行う「迷子集会(まいごセンター)」やYouTubeショートでMyGO!!!!!のショートアニメを流していたりしていたが、いずれも上記の説明の通り「いつも穏やかな雰囲気のお姉さん的存在(ママ)」として描かれていた。アニメ前半でも何も知らない愛音ちゃんを導く存在として描かれており、視聴当時は所謂「物語における重要なキャラクター」だと認識していなかった。

  • 椎名 立希(しいな たき)

私がこのアニメを見ようと思った要因の一人。何とこのキャラクターの声優が林 鼓子さんで、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の優木せつ菜役の方なんですねぇ。ただ、せつ菜ちゃんとは違い立希ちゃんは凄くぶっきらぼうな性格をしており、基本的にずっと怖い。こちらも後述するが燈ちゃんが大好きで、アニメでは基本的に燈ちゃんの為に行動する事がほとんど。燈はかわいいんだよ。

  • 要 楽奈(かなめ らあな)

バンドリ君本当にやってくれたなぁ!?というキャラ。とんでもないギミック(ギミックって言うな)を抱えているのだが、それは今回の記事では省略します。この子は野良猫の擬人化だと思っていただければ()。神出鬼没で物事を「おもしれー」か「つまんねー」か「抹茶」の3つで判断してる(?)。おもしれー女、の子。

アニメでは所謂「イニシエーター」的役割を果たしている。燈が語り始めれば楽奈ちゃんがギターでBGMを流し、楽奈ちゃんがギターを弾けば燈ちゃんが詩(うた)い始める。このバンドは楽奈ちゃんから始まると言っても過言ではない。やばい泣きそう。

BanG Dream! It's MyGO!!!!!の見どころについて

このアニメは「とある回の3分間を表現するために全てを費やしたアニメ」です。人それぞれ感性が違うと思うので絶対そうだ!とは言いませんが、私はそう感じました。後ほど語らせてください。

3話までの内容について

という訳で『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』の視聴を開始したのだが、これがまた初手からビックリさせられた。

開始2分で名前も知らない女の子達がいきなり名前も知らないバンドを解散するところから始まる。え?どういう事だ?

この解散したバンドについては3話で詳細が分かった。どうやらバンド名は「CRYCHIC」と言い、ライブ後にSNSで「ボーカル必死すぎ。」という感想をメンバーが目にした事でバンド間に亀裂が入り、解散したようだった。(実際にはミスリードだという事が後に判明するのだが、その時点ではそのような演出になっていた。)

この3話は24分間全て「高松燈の一人称視点」で過去を振り返る演出になっており、これは3Dアニメだからこそできる演出だった。以下は3話のあらすじ。


幼少期から彼女が「人とズレている」事を燈の一人称視点でじっくり描かれた。先生に「お友達と外で遊ばない?」と聞かれても石を集める事に夢中な燈。友達が「燈ちゃんも葉っぱ好きなの?ミヨも好き!」と笑いかけてくれた事を「ミヨちゃんも"何かを集める事"が好き」だと勘違いし、ダンゴムシを沢山渡して驚かせてしまう燈。ちなみにお母さんから後に「ダンゴムシいっぱい貰ったら、お母さんも嫌だな〜」と優しく注意されたのだが、燈はこの頃から「みんなとズレている」という事を認識してしまう。「世界からズレないように」「人間になりたい」等の言葉をア・テンポノートという自由帳に書くようになる。

中学に入っても燈の感性はみんなと少し違う。登校中に昨日のドラマが感動したと話しているクラスメイトから「燈ちゃんも見た?昨日のドラマ。」と聞かれた際には「うん、なんか...怖かった...」と返し、共感してもらえない。「みんなみたいに友達できたけど」「みんなといるのに独りみたいな」「人間になりたい」とア・テンポノートにどんどん燈の言葉が綴られていく。

そんな中で出会ったのが「豊川 祥子(とがわ さきこ)」だった。彼女は燈のア・テンポノートを見て「歌詞ですの!?」と嬉しそうに燈に聞く。もちろん燈にはそんなつもりは一切なかったが、その後祥子の家でア・テンポノートに書かれている言葉を燈の目の前でピアノを弾きながら歌い出す。そう、燈が書いてきた言葉は「歌」になったのだ。(この時に歌った曲は「人間になりたいうた」という。覚えておくように。)

そして祥子は燈に「私と、バンドを組んでくださらない?」と提案する。その後祥子は「長崎 そよ」「椎名 立希(しいな たき)」「若葉 睦(わかば むつみ)」をメンバーに引き入れ、5人のバンド「CRYCHIC」を結成した。 ボーカルは燈が担当する事になったがメンバーの前で歌うのも恥ずかしく、中々歌う事ができない。「何で私(がボーカル)なの?」と聞く燈に祥子は「燈の歌詞は、心の叫びなのですから。」と優しく伝える。

次第に彼女達はどんどん親睦を深め、燈は「やさしく」「美しい」「温かい」という言葉を書き並べ、初めて「詩(歌詞)」を書いた。曲名は「春日影(はるひかげ)」、BanG Dream! It's MyGO!!!!!における一番大事な曲だ。

祥子はこの詩を読んだ時、「春日影は...私達の歌ですのね...」と泣きながら言った。そう、燈の詩は読んだ者の心を震わせる。「この詩は"私"の事を言ってくれている」。そう思わせる才能が彼女にはあった。そんな彼女が書いた"詩"は祥子が作曲し、"歌"となったのだ。

春日影のイントロは祥子のピアノから始まる。とても温かい曲に本当に感動したのを覚えているし、これからも忘れる事はないと思う。本当に私にとっても大事な曲になった。

そんな彼女達CRYCHICは初めてのライブを大成功させる。メンバー(主に立希ちゃんが)泣きながら燈を褒めちぎる。そんな素晴らしいライブを終えた彼女達は...

解散した。どうしてこうなったのか、誰にも分かってない。突然「CRYCHICを、辞めさせていただきますわ」と告げた祥子。「私は、バンド、楽しいって思った事...一度もない。」とCRYCHIC解散を決定づけた睦の一言。全部燈やそよ、立希は分からない。もちろん私達視聴者も。

そうして彼女達は傷付いた。燈は「自分だけ泣けないのは、どうしてだろう...冷たいのかな...何かが欠けているのかな...人間として。」「皆みたいに大事なものがない。皆みたいに、涙するほど大事なものが欲しい。」「あるとすれば、それは...CRYCHICだった...」と涙しながら思うのだった。


という非常に重い過去が言及されていく。3話で燈ちゃんの一人称視点での映像を見せられた我々視聴者はもう燈ちゃんの事をただの「不思議ちゃんなキャラクター」と思うことができなくなる。だって燈ちゃんが考えている事、感じた事、嬉しかった事、辛かった事...全部とまではいかなくても知ってしまったから。

こういった回を重ねていき、次第に我々視聴者は「千早愛音」と「高松燈」を見守りたい、頑張ってほしい、救われてほしいという感情になっていく。

9話までの感想

このアニメの凄いところは9話までずっと辛いということだ。昨今のアニメは所謂「3話切り」なんて珍しくなく、何だったら1話でつまらなかったら視聴を切られてしまう事も少なくない。更に最近は「見てもストレスを抱える事なく視聴でき、それなりにカタルシスを得られる」ような作品が求められており、このアニメは時代に反しているとも言える。

驚く事に、9話までに得られるカタルシスはほとんどないと言ってもいいかもしれない。7話で初ライブを成功させたと思ったらCRYCHICの地雷を完全に踏み抜き誰も幸せにならなかった。

それどころか9話時点で5人は完全にバラバラになってしまう。文字通り全部失ってしまったとも言えた。

そして9話終了時、登場人物全員が闇を抱える事になる。長崎そよは「豊川祥子に拒絶された事でバンド活動をする意味を失ってしまった」。彼女はCRYCHICの事を未だに忘れられず、また"あの時の5人"でバンドができるように愛音を利用していた。だがCRYCHICを復活させる事は絶望的になってしまい、9話時点で練習に顔を出すことはなくなった。だってもう愛音に価値がないから。一緒に居ても意味がないから。

椎名立希はそんな長崎そよの気持ちを知ってしまい、バンドメンバーから切り捨てる事を(勝手に)決意する。立希は「高松燈と一緒にバンドをする」事"だけ"が目的で、燈とバンドを続ける為に動いてしまったのだ。結果としてその行動はバンドが完全に崩壊する要因となってしまった。

要楽奈は長崎そよについて迷っている高松燈を見て「つまんねー女の子」と吐き捨て、8話時点でバンドから消えてしまう。お前本当に自由だな。

千早愛音は立希から「あいつ...お前も楽奈も要らないって。燈と私を繋ぎ止める為に利用したんだよ!」という事実を知らされ、記憶力の良い彼女は今までの長崎そよの発言を思い出す。『燈って...高松燈ちゃん?』『お友達なの!』『愛音ちゃんとバンドするんだけど、立希ちゃんも一緒にやらない?『愛音ちゃんのお陰で、久しぶりに燈ちゃんと話せたから。』『ねぇ、私達...もう一回やり直せないのかな?バンド。私と、燈ちゃんと、立希ちゃんと...』

そう、今まで一度だって"自分"が含まれた事なんてなかったのだ。その事に気づいてしまった愛音ちゃんは「私、要らないんでしょ?...燈ちゃんはそよさんとCRYCHICやりなよ。」と悲しい表情のままバンドから離れてしまう。ここまで愛音ちゃんに共感したり応援したりしていた我々視聴者は本当に行き場のないぐちゃぐちゃな感情を抱く事になる。私に至っては「もうこいつらとバンドしなくていい。愛音ちゃんだけ幸せになってくれ...」と思ってしまう程だった。というか悔しかった。あまりにも報われなさすぎて。

高松燈は自分が歌った「春日影」によってまたバンドが崩壊し(燈ちゃんにとっては2回目)、「バンドなんて...やりたくなかった...」と泣き慣れてない子どものように目をゴシゴシしながら涙する。「皆みたいに大事なものがない。皆みたいに、涙するほど大事なものが欲しい。」と3話で語った燈ちゃんが初めて視聴者に見せた泣く姿だった。

という文字通り「最悪な状態」で9話が終わってしまった。全員が「自分のことだけ考えている」状態、「メンバーの事を誰一人見ていない」という状態。視聴時点では正直ここから挽回することは勿論不可能、「どうやって視聴者にカタルシスを提供するんだ?」という風にすら思っていた。あの衝撃の10話を見るまで。



















BanG Dream! It's MyGO!!!!! 10話『ずっと迷子』

みんな傷付いてきた。それは登場人物だけじゃない、我々視聴者も。

だって9話分の重みだ。それこそ時間で言ったら約4時間。毎週見てた人にとっては2ヶ月半もの期間。

この時間で"全員"の心はバラバラになってしまった。もう何を言ったって伝わらない。

上部だけの会話の無意味さを理解させられた。キャラクター達だけでない、私達も含め全員がお手上げ状態。

そんな状態からBanG Dream! It's MyGO!!!!!の10話が始まった。


立希は冒頭バンドについて「終わった。」と一言告げるのみ。そよは元CRYCHICメンバーの若葉 睦を完全無視する始末。

愛音はクラスで燈が登校してきても無反応。燈が授業中消しゴムを落としても後ろの席の愛音は拾わない。全部無くなってしまった。何もかも。



そんな時に燈はとある少女と出会った。偶然にもプラネタリウムで隣の席になったその少女は、席を倒すことに苦戦していた。そんな彼女を燈は助けた。ただそれだけの出会いだったが、この少女との出会いが物語を大きく動かす。

プラネタリウムの鑑賞を終えた後、燈は外でぼーっとしながら歩いていた。ぼーっとしすぎて階段から足を踏み外しそうになってしまうが、そんな燈の肩を掴んで助けたのが先ほどのプラネタリウムで隣の席だった少女、三角 初華(みすみ ういか)だった。

「大丈夫?泣き出しそうに見えたから。」と尋ねる初華に何も返す事ができず、俯く燈。そんな燈の様子を見た初華は「都会でも北極星って見えるんだよね。東京じゃ星は見えないって思っていたから。見つけた時は驚いたなぁ。」と話し始める。不器用な燈は愛音ちゃんのように愛想笑いをするでもなく、北極星を指差しながら「...大熊座。小熊座。えっと...」と初華に説明するように話し出す。指を差す仕草をした際に、いつも持ち歩いていたア・テンポノートが下に落ちる。

そのノートと一緒に落ちたノートの切れ端を拾った初華が目にしたものは、『ちっぽけな僕』という題名の燈の"詩"だった。

それを見た初華は、

「"詩(うた)"みたいだね。詩(うた)って、伝わる気がするよね。上手に言えない事も、言葉以上に。気持ちが。」

と燈に語りかける。その言葉を聞いて燈は7話でライブした時に祥子が自分に「頑張れ!」と声でなく表情で伝えてきたあの瞬間を思い出す。

そう、上手に言わなくても。"言葉"じゃなくても。気持ちは伝わるんだ。

「伝わるといいね。」と残し、その場から去っていく初華。「詩(うた)...」と呟いた燈は、ある決意をする。

かつて離れてしまった友達に。何も言えなくて伝えられなかった友達に。燈は「詩う(うたう)」事を決意した。

次の日クラスで燈は愛音に、「.......一緒に、ライブや、って...」と不器用に言葉を伝える。「そよさんどうすんの?」とぶっきらぼうに告げ、その場を離れる愛音。気持ちは届かない。

その後ライブハウスにライブの申請をする燈。何とソロで出ると言い出す。その情報は勿論そこで働いている立希にも伝わるが、ライブの日付を聞くだけ。行動はしない。

ライブハウスの舞台裏には燈を「つまんねー女の子」と吐き捨てた楽奈がいつものようにケータリングを盗み食いしていた。もちろん燈の事なんて気にも留めてない。

そんな状況の中、燈はステージに立つ。事前準備なんて何もしていない。観客も誰も燈の事なんて知らない。それでも燈はマイクと"詩"が書かれたノートの紙切れだけを持ってステージで話し始める。

「みんな、居なくて。曲もないけど。これは、詩(うた)です。」

そう告げて、『ちっぽけな僕』を詩(うた)い始める。たった一人で。

燈が語り始めればこの女はいつだってギターでBGMを流す。そう、楽奈が舞台裏で燈の"語り"を聞いて反応した。

「...そうだ。これは、詩(うた)なんだ。」この語りの直後、突然横からギターの音が流れ始める。楽奈が勝手にステージに上がり、ギターを弾き始めたのだ。

この詩は、楽奈から始まる。このバンドは、楽奈から始まる。

そうして『ちっぽけな僕』を詩い切った燈。観客からは戸惑いながらも拍手の音。楽奈は一言「おもしれー女、の子」と呟く。

このライブの様子は徐々に話題になっていく。毎回変わる歌詞。ギターのアレンジも変えてきてる。「面白い子たち出てきたね〜」という声が徐々に広がっていく。

クラスメイトも燈のライブを見に行きはじめる。「朗読凄かったよ〜、私泣いちゃって〜」と感想を伝えるクラスメイトで燈の周りに人が集まっている。

そんな様子を見ていた愛音は自分の手を見ながら「やっぱり、要らないじゃん...」と呟く。その手にはギターの練習で出来た水ぶくれを覆う絆創膏が何個もあった。そう、愛音はバンドから離れた後も一人練習し続けていたのだ。

燈の話題は勿論立希の耳にも届く。それでもまだ行動することができない。そこに現れたのは...楽奈だった。立希の手を勝手に掴み、「ドラムやって。」と無理やりステージに連れていく。

ステージで立希が目にしたのは、独り詩い続ける燈の姿。ステージにいつも通り勝手に上がった楽奈は、いつも通りギターを弾き始める。アルペジオで燈の詩を彩る。そんな様子を舞台袖で見つめているだけの立希に、楽奈は「はよ弾け」と言わんばかりの目で訴える。

ドラムを叩く理由なんて後ででいい。燈の詩にスネアの連打音が加わる。立希はステージに、燈の元に戻ってきた。

ライブ終了後、非常階段で燈と立希は話し始める。「...何考えてるか全然分かんなかったけど。でも...燈の詩(うた)を聞いて分かった。」と自身の想いを燈に告げる。そこに突然現れた若葉睦。「そよは...分からなくなっている。」それだけ言い残しその場を去ってしまう。その言葉を聞いて燈は決意する。

『愛音ちゃんをバンドに連れ戻す』と。

次の日愛音が登校すると、席の前で燈が待ち構えていた。「...ギター弾いて。一緒にライブやって...」

「私、要らないでしょ?...」と悲しい表情で呟く愛音。

前までの燈ならここで会話が終わっていた。自分の気持ちを伝えず、そこで言葉は終わっていた。でも。

「...いる!愛音ちゃん要るよ!!愛音ちゃんがいないと...!」今まで聞いたこともないくらいの大声で叫ぶ。

「ギター、弾いて!!!」

その顔は完全に紅潮し、息も切らしている。この物語の中で一番の、燈の叫びだった。

それでも逃げ出す愛音。屋上に逃げ込むが燈も必死に追いかける。

「本当に(バンドを)やりたかった訳じゃないし...」

「だったら、どうして誘ったの?」「別にいいでしょ...」「愛音ちゃん!!」

愛音は遂に意を決する。「見栄だよ!!!」

そう、愛音は見栄でバンドを始めた。クラスメイトがみんなバンド組んでたから始めた。他のみんなのように特別な想いなんてなかった。

まるで我々視聴者が何となくこのアニメを見始めたのと同じように。何となく始めたのだ。

そんな愛音に燈は、

「愛音ちゃんは必死でもがいてて...そよちゃんも、私も。迷子だから...。一緒に、一緒に迷子になろう?」

彼女達は全員迷子。どうすればいいか、どこに向かうべきか、分からない。そんな彼女達のアニメは「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」。だからこの物語は、"迷子"と呼ばれる。

あまりにも綺麗なタイトル回収にこの時点で私の涙腺は緩んでいた。本当に良いアニメだな、と。

ただ、冒頭にも説明したがこのアニメは「とある回の3分間を表現するために全てを費やしたアニメ」である。とある回とはもう分かると思う、10話だ。

まだ10話は終わっていない。そう、このバンドには「長崎そよ」が必要だ。

ただ、長崎そよは練習にも顔を出さなくなってしまった。この状態ではステージに立たせる事は不可能。であれば、無理やりでもライブハウスに来てもらう必要がある。その役を買って出たのは愛音だった。長崎そよに「要らない」と思われている愛音は、そよの学校の校門前で待ち伏せる。

勿論そよはガン無視を決め込む。でも愛音は引かない。引くはずがない。だって燈と「一緒に迷子になろう」と約束してしまったから。その中に長崎そよも含まれているから。

無視を決め込むそよを追いかけ続けていると、そよの家に着いてしまった。そよは諦めながら愛音を家に「入れば?」と招き入れる。

家の中で愛音とそよは煽り合いを始める。「裏表凄いし、嘘つきまくりだし。意地悪いところあるでしょ?」と愛音。「迷子なんだって?燈ちゃんが言ってたよ。」と続ける。「燈ちゃんは待ってる...アンタが私を要らないって言おうが、私はやるけど。」

そんな愛音に対し「見栄で始めたくせに...」と返すそよ。でも、そんな煽りはもう効くはずがなかった。

「私たちが始めたバンドじゃん...」と答えた愛音に対し、「だったら、私が終わらせてあげる...!」と誘いに乗ってしまうそよ。見事にそよをライブハウスに来させる事に成功した。

ライブハウスまで来てしまったら、後は会話なんて要らない。ステージ上でライブの準備をする燈、楽奈、立希。観客もライブハウスいっぱいに入ってる。そんな様子を見ながら愛音はステージに、バンドに戻ってきた。「準備できてんの?」と軽口を叩く立希に「あー、はいはい」と適当に流す愛音。立希は9話で愛音にそよの事を告げた事をずっと気に病んでいたが、愛音は戻ってきた。なら、もう会話なんて要らない。

そして燈は、観客に混じっているそよの姿を見つける。観客を押し除けてそよのところに走る燈。無理やりそよの手を掴み、ステージに連れていく。「離して!」と拒絶するそよだったが、燈のやる事は決まっていた。会話する必要はない。とにかくステージに長崎そよを立たせる。そよの否定は燈の手を振り解けない。

ステージ前まで連れてこられたそよは「勘違いしないで!終わらせにきたの!」と叫ぶが、そんな声にステージ上の愛音達は何も返事をしない。ステージ前のそよの手を愛音は無理やり掴み、ステージに強引に引き上げた。

ステージに引き上げられたそよに、ベースを「待ってました」とでも言わんばかりに渡す楽奈。渡し終えるとすぐにギターを弾き始めた。燈の詩に添えてたあのアルペジオを、勝手に弾き始める。ドラムのスネアを立希も続けて鳴らし始める。

楽奈ちゃんがギターを弾けば燈ちゃんが詩(うた)い始める。このバンドはそういうバンドだ。

この詩のタイトルは「詩超絆(うたことば)」。

このアニメは、10話分という長い時間を使い、たった3分ほどのこの曲に全てを捧げた。

"燈の詩(うた)は、心の叫びだから"。キャラクター達だけに向けてじゃない。我々視聴者にも向けて。無理やりにでも納得"させる"。この曲で。

皆、詩超絆の途中で想い想いの感情を見せる。立希は「燈の心の叫びを聴き、涙を流す」。愛音は「そんな泣いている立希を見てもらい泣きする」。愛音ちゃんはそういうところも含めて良いキャラだ、本当に。そよは「CRYCHICは本当にもう終わってしまった事を自覚し、泣き叫ぶ」。詩超絆は"再生"の詩だが、そよにとっては"終わり"の詩。楽奈は「燈の詩を聴き、とびっきりのニヤケ顔でギターをかき鳴らす」。楽奈ちゃんにとって燈はおもしれー存在。そんなおもしれー存在とバンドできる事にこれまで見せたことのない楽しそうな顔を見せる。燈は「観客の方を一切見ず、そよの事だけ見つめ、涙を流しながら詩を詩う」。燈にとってこのバンドは、CRYCHIC同様「涙するほど大事なもの」なのだ。そしてこの詩を観客や我々視聴者に向けてではなく「そよに向けて」詩ったのだ。

"ここではじめよう もう一度"


この回は、本当に詩超絆を"詩い切って"終わる。

何も解決なんてしてない。まだ何も終わっていない。ただ燈が、迷子のバンドが詩っただけ。

何という強引さ。でも骨の髄まで理解させられた。「このやり方がBanG Dream! It's MyGO!!!!!だ!」と。

令和最大の鬱アニメと評された事もあった。何度も「辛い」という感想が出た。でもここに、10話で文字通り(視聴者含め)全員が救われてしまった。

アニメ結局見てないけどこの記事を見てしまったって人も、もうしょうがないから上の詩超絆の動画を見てくれ。それで気になったらアニメを見てくれ。いや、見た方が良い。心が震える体験を味わった方が良い。絶対。

BanG Dream! 12th LIVE「小さな一瞬」レポ

という訳で本当に凄い作品だった「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」だが、放送終了後2ヶ月後に単独ライブがあった。

アニメ終了後という事で絶対アニメの曲をやってくれるだろうなぁという淡い希望を抱きながら私も参戦した。

という事で、ここからは11月に行われたMyGO!!!!!単独ライブについての感想を書いていく。

ライブ後半パートについて

このライブは前半パートは5thまでのセトリを元に構成されていた。今回やらないと思っていたカバー曲も3曲(swimとHenceforth、猛独が襲う)演奏し、前半パート最後は5thライブでのアンコール曲だった、「音一会」。MCパートは担当キャラクターを演じたまま進行するという、とても楽しい体験だった。

そして後半パート一発目、披露されたのは「人間になりたいうた(燈Ver.)」だった。 この時点でMyGO!!!!!がここから何をするか、理解してしまった。そう、今回のライブは「アニメの完全再現」。MCパートをキャラクターのまま進行していたのは、全てこの後半パートの為だった。

そして2曲目に演奏されたのは...まさかの『ちっぽけな僕』。 10話をこれでもかと再現してきた。最初は燈ちゃん役の羊宮さんしかいなかった。羊宮さんは独り詩い始めた。そこに途中から楽奈ちゃん役の青木さんが登場し、『ちっぽけな僕』のアルペジオを弾き出した。という事は次は...そう、立希ちゃん役の林さんが登場し、スネアを叩く。

そして会場にいる全員が全てを理解した上で既に泣き出している人も多い中(勿論私もこの段階で既に泣いてます)、満を持して「詩超絆」が始まった。

舞台袖から愛音ちゃん役の立石さんが登場し、詩超絆の前奏部分を弾き始める。そしてそよりん役の小日向さんが登場したところで、ステージ上にある全てのライトが白く照らされた。その輝きで私は「10話のライブハウスで詩超絆を聴くモブ」になれた。アニメの世界に入る事ができたのだ。

詩超絆を演奏中、10話再現の「観客の方を誰ひとり向かずに演奏し続ける」というのもやってくれた。ここまでやってくれるのかブシロード様は...と止まらない涙を垂れ流しながら感謝した。ありがとう...

その後も12話のライブパートを再現し、最後は12話最後の「碧天伴奏」の冒頭部分を再現までしてくれた。というかセトリの最後が碧天伴奏は本当に恐れ入った。アニメで尺の都合上聞けなかった「迷子でもいい、迷子でも進めえええ!!!!」の後の部分を聞くことができた。ある意味この曲を聞いたことで私の中で「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」の物語が完成した。ちゃんと次のAve Mujicaを何のモヤモヤを抱えずに見る事ができる。MyGO!!!!!を自分の中でちゃんと"終わらせる"ことができたのだ。

ライブを見に行って、過去一番満足度の高いだなと思った最高のライブでした。

終わりに

最後のライブの感想については完全にへばってしまってこれ以上書けないので(自業自得)、いつかちゃんと感想記事を書きたいと思います。

次回はしゃりんさんです。楽しみにしてます。